第14回 2023年大会審査員講評
-Event report・Judges' comments-
第14回目を迎えた日本ビジネススクール・ケース・コンペティションは、2023年11月26日(日)大会史上初めて立教大学タッカーホールで本選大会を開催。会場には4年ぶりに一般の観客をお迎えしました。各審査員からの大会講評を掲載します。
審査員講評
-Judges' comments-
株式会社経営共創基盤
IGPIグループ会長
冨山 和彦 様
皆さん、本当にお疲れ様でした。 まず、毎回言っているのですが、セミファイナルまで来た20チームは、たぶんビジネス上のリアルな戦闘能力やケーパビリティーはほぼ一緒です。そう思ってください。実際に現場に行くと似たり寄ったり。だから賞を取ったチームは油断しないように。だから、今日決勝に残れなかったチームも含めて、落胆する必要は全くありません。ほぼ誤差みたいなものです。ですので、ここに来れただけで、本当に大変なことだと思っています。すごいチーム数がいるし、学校数もいるし、今回のテーマは本当に難しい。要するに、純粋なプライベートビジネスの議論ではないので、考えるべき要素が普通よりも何倍も多くて、それが立体的に複雑に絡み合っている。多分、皆さん相当苦労したでしょう。きっとね。そこは容易に想像がつきます。自分たちでしているものでもあり、余計にそう思います。 いくつか全体的なことと個別のことを言います。これは何人かの審査員の方がおっしゃっていましたけれど、ローカル経済のリアルエコノミクスというのは、実は普段、皆さんがビジネススクールで勉強しているような、例えば自動車産業とか電機産業とは違います。また、過去30年間、日本がデフレ経済の中で、ずっと回ってきたようなものとも全然違っていて、明確に地方は人口減少し、日本全体も人口減少となります。これは20世紀の成長モデルだと、市場縮小すると考えます。そうすると、みんな、当然、供給過剰になると思うのです。これは絶対にならないです。 理由は簡単で、日本の人口減少要因は少子高齢化だからです。少子高齢化ということは、生産労働人口が永続的に相対的に需要量よりも減っていくということです。全体の減り方よりも生産労働人口が先に減っていく。現状、日本の合計特殊出生率が1.2かな。これが2を超えない限り、この状況は変わりません。皆さんの中で、これが2を超えるって感じを持ってる人はいないでしょ、誰も。ですから、この国は恒常的に恒久的に労働力が足りない国になるのです。これが先行的に地方で起きている。だから、東京の人がぼんやりと地方へ行くと「人、いないよね。お客さん、いないよね。経済縮小だよね。きっと人が余ってる」って考えてしまうけど、地方の方が人は足りないのです。それはさっき、伊藤さんがおっしゃったように、20年後に東京でも必ず起きるのです。 これが製造業と根本的に違うのは、製造業は人がいなくなっても海外から物が入ってくることです。貿易財なので。だけど、観光業であるとか今回出てるような旅客運送業とかホテル業、それから農林水産業もそうですね。リアルヒューマンビジネスなので、これはどうしようもないのです。要するに、我々IGPIが例えば東北地方、福島県でバス会社をやっているときに、ベトナムのバス会社とは絶対に競合しません。彼らがどんなに安い賃金でどんなに効率的な運用しても競合関係にはないのです。そうすると、その地域における労働供給にすべて規定されるのですね。 繰り返しますが、生産労働人口の方が先に減っていきます。それは少子高齢化だから。全体需要は圧倒的に遅行的に減ってゆきますが、相対的に日本はどんどん高齢社会になるので、このギャップは埋まりません。恒久的に。おまけにインバウンドが来ます。大大労働供給制約の社会になっているのです。 これが先に地方でリアルに起きているので、いわゆる田舎の地方、松山や我々の東北地方、あるいは南紀白浜もそうですが、その実感ってよくわかるのです。だから今、タクシーの問題が出ていますよね。なぜタクシーが来ないかと言うと、人がいないのです。運転する人がいない。本当に。だから、あれを本気で解決しようと思うなら、最後は無人運転タクシーしかない。そういう状況なのです。 そういう意味で言うと、エコノミクスが全然違います。だから、今、昔だったら考えられないようなビジネスモデル、例えば週休3日4日にしてほとんど開けない旅館が儲かるのです。考えられないでしょ。昔は旅館と言えば稼働率商売で、設備稼働率の戦いだから、とにかくいなかったら安い値段でお客さんを入れちゃえというのは常識的でした。いま、絶対やってはダメなのです。絶対儲からなくなるのです。だから、むしろ休んでしまって、金土日だけやったほうが儲かるのです。今、コペルニクス的にエコノミクスが転換しているのです。 これは、この後、必ず東京でも京都でも来ます。これに逆らうと、かえって儲からなくなります。例えば火水木で無理やり旅館を開けて安い団体客を採るでしょ。もう全然赤字です、こんなことやったら絶対儲からない。そもそも宴会で必要な仲居さんが集まりません。そういう風に変わってしまっている。これはもう本当にコペルニクス的大転換が起きている。 さっき途中できついことを言いましたが、多くのローカル企業の経営者は実はまだこのことに気が付いていない。だから、例えば我々が東北地方でバス会社を経営してますが、この時の我々の経営的なポイントは、一つ、付加価値労働生産性です。付加価値労働生産性を上げて、労働分配率、これに労働分配率をかけたら賃金です。これを上げて高い賃金払う。これだけでどんどん成長していきます。 理由は簡単です。運転手を確保することが勝ちなのです。運転手の数が地方でほぼシェアを決めます。これはタクシーも一緒。もうこの勝負です。ここで、経営が苦しいからといって、頑張って賃金安い労働者で運転手雇うなんてやるのは絶対ダメです。かえって赤字が膨らんじゃうのです。だから今までの直感とは逆のことをやらなきゃいけないのです。 実はこれはずっとテーマの底流にあり、皆さん、結構この問題に気づいていました。だから、そこは嬉しかったです。やはり実際現場行くとわかるからなのでしょうね。逆に言うと、気づいてない状況が多いということはチャンスなのです。まだ気づいてる人、少ないよね、木下さん。まだ少ないのですよ。そのうち、みんな気づいてしまうので、今のうちです。そう思いました。 それからもう一点、何名かおっしゃっていましたけど、公共との関係。特にローカルのビジネスはもともとそうなのですが、こういう時代になってくると、ある種の公共財を提供している部分があるのです。公共財を提供するときに、東京などですと公共サービスに対して需要密度が大きいので、まだ純粋なプライベートビジネスで成り立つのです。 ところが地方に行ってしまうと需要密度が薄くなってくるので、当然なことながら、公共とセットになる。専門用語でナショナルミニマムって言うのですが、ナショナルミニマムを満たしていかないといけないという問題があります。この空港も同じ問題があるのですね。空港もある種のライフライン的な性格を持っている。例えば、震災などが起きてしまうと、空港しか生き残らない場合があるので、どうしても維持しなければならないという問題がある。これは鉄道とかもそうです。多分それで岩井さんも地方鉄道で苦労されているのだと思いますが、これは宿命的にそうなる。そうなってしまうと、公共の担う責任と、民間の担う責任と、上手にリスクとリターンとの動機づけを配分してやっていくことが必要で、確かにここはもう少し皆さん図々しくなってもいいのかなという気がします。 路線対策の議論というのはやってみると分かるのですが、すごく大変です。少しきつい言い方をすると、最後の最後、本当にこの路線を撤退していいのですか、どうですかということを公共に突きつけるということは絶対やらなければダメで、当然、公共の側は、そこに住んでいる高齢者の方の命に関わるのです。要するにバスが撤退すると病院に行く足になくなるので。何人か提案していたけれども、その代替で巡回型のオンデマンドを走らせてみたらどうかというのは、毎回毎回相当ミクロでシビアな交渉をすることになります。これはもう最後は公共の判断です。要するに、そういった公共性の公共財というものを最後の最後に担うのは、むしろ地公体の責任なので。それをどうするかというのは、最後はお金の問題になってしまうのですけど、私はそこはかなりシビアな議論をやるべきと考えますし、やらなきゃいけない時代です。これはお互いに本当に胸襟を開いてガチで議論をしないとダメだという時代になっているので、そういうことが皆さん、これからローカルに挑戦するときは、もっと図々しくというか、フェアに図々しくなってください。そう思いました。 ここから先はチームの個別の話をします。 まず1チーム目のグロービスのオンラインチーム。これも何人かおっしゃっていましたが、マーケティング戦略というか、トータルなパッケージとしてはすごくバランスのいい話をしていると思いました。人件費のところは少し突っ込んでしまいましたが、なぜ突っ込んだかというと、やろうとしていることは良い。正しいのですが、恐らくHOWのところで必ずその問題とぶつかるのです。そこは相当深掘りをしていかないと持続性がないので、突っ込みました。 やはり蒸気船のやりとりは良かったですね。僕は岩井さんとつるんでいるのかと思いました。もう嬉々として待っていたなと思って、あれは今回秀逸だったと思います。今回のQ&Aの中で本当に良かった。ある種、革命的なことをやろうとしていることはよくわかったので、そこにさっき言ったような、いろんなしたたかさというのが尖ってくると、このチームは面白いなと思ったので、チーム名は「革命をしたたかに」としました。 2つ目のチームは立教大学ですね。ちなみに今回、立教大学が大活躍でした。別に我々、ホームタウンディシジョンでひいきをしていないです。セミファイナル3チーム、ファイナルで2チームというのは、ひょっとするとビジネススクールの先生方と相当頑張ってくれたのではと想像しています。 本当に大躍進で非常に私も感心いたしました。このチームは“ゆるふわ”と言ってたわりには、内容はsolidな、わりと堅実な計画でした。実際のプランとしてはかなりsolidで、Down to earthな計画でした。実経営者的に好感を持ったアウトプットでした。あえて言えば、このチームもこの会社の基幹事業は公共交通事業。社会的な責任の重さと事業規模、あるいは従業員の数もそうかな。そこについての切り込みが、まだ浅い感じはしました。もっと頑張るにしても頑張らないにしても、やはりこの議論はちゃんと深めておかないと、突っ込まれる。というか大変なので、そんな印象となりました。ということで、チーム名は「ゆるキャラのみきゃんちゃんは意外と堅実」ということにしました。 続いて、小樽商科大学ですが、地方にいる皆さんなので、私は議論の中身としてローカルリアリティーが一番あったように思います。チームのテーマでもありましたが、エリアの成長と空港の成長の問題と、企業体の成長が3つ重なっていないといけない。確かに空港の一つのメリットとしては、ほぼ地域独占に近く、地域ドミナントなので、あらゆる意味でDMO的役割を極めてナチュラルに果たせる企業体なのですね。これはあまりなくて、意外と地域によっては地方公共交通も内部ですごい競争をしていて、足を引っ張り合っているところもあるし、あるいはバスとタクシーを違うところがやっていて足を引っ張り合っているところもある。意外とコーディネーションは難しいです。経済学でいうCoordination failureが起きやすいのです。要するにMaaSというのは、それを何とかしようということで、MaaSということになるのですが、アプリを作っても現実には足を引っ張り合うことが起きがちです。僕らもいっぱい経験しているので。そういった意味で着眼点は素晴らしかったと思います。ちょっと惜しかったなと思うのは、やはり空港コンセッションのところで、地域の推進の話と、それから個別事業の話とを上手に共通集合を大きくしていくことを本気で取り組むのでしたら、私であれば空港は絶対にマジョリティを取りに行きます。15%ということにはこだわりません。組織能力的な優位性がないので東京の不動産会社と組みません。よほど自分たちのほうがあるような気がしますし、必要な人は個別に人を採ってくれば良いのです。そこまでいってくれると結果も変わっていたかも。 要はこの地方の話はプライベートだから、パブリックの世界とプライベートの世界はむしろ混同した方がよいです。要するに、コラボレーションすることが大事なので、ちょっと危険な言葉なのですが、チーム名は「公私混同のススメ」としました。 4番目は立教大学の野口さんチームです。農業は、現実問題としてはなかなか儲かりません。食という着眼点について僕は良しだと思います。これは間違いなくそうです。よく言われる農業の6次産業化っていう話には僕はすごくネガティブです。農業でせっかく素晴らしい生鮮フレッシュな材料を持っている地域が加工食品にしてナショナルプロダクトにして大企業と競争するのは間違っていると思っています。それは付加価値の低いところに行くということだと思います。付加価値の低い大量生産に行く必要はないのです。今、地方の経済は人が減っていくので。昔だったら10万人を食べさせないといけなかったものが、今は2万人を食べさせればいいわけです。人が減ってますから、もう付加価値なのです。だからそういう意味で言うと観光の軸であるとか、高付加価値の軸で食を追求するというのが正しい軸で、着眼点は良かったのですが、確かに単価は低かったかなと思っています。惜しいかなと思いました。 それ以外のところはすごくsolidにいろんな議論をしていて、ポートフォリオ経営などはここが一番よく、ちゃんと議論しているなと好感を持ちました。というわけで、この戦略でいくのであれば交通事業はノンコアになっていくのだろうと思ったので、これは私の主観も入っていますが、チーム名は「交通事業を売ってちょうだい」としました。 最後に優勝した早稲田大学チームです。ここは一番、solidな、タイトなプレゼンでした。確かに、この空気感として、同調圧力的に空港コンセッションをやらないというのは、結構勇気がいるので、相当かちっとしたロジックにしておかないとダメなんだろうと思います。だから、そういった意味で残される事業について、悪く言うと縮小均衡なのですが、確実に持続可能なプランだったと思います。ですが、空港が持っているDMO的なポテンシャルで言うと、実は地域公共交通事業をちゃんと持続可能にするということと、空港を軸にしたDMO的なものをパッケージにするということは矛盾しないのです。実はこれ大した投資にならないと思います。これはコンセッションの状況によりますが、大きなお金を掛けなくとも、マジョリティが取れるような気がするので、エキサイトメントという観点からすると、むしろマジョリティを取りに行くという前提で空港をやることをセットとしていたら大満点だったかと思います。あれだけsolidなベースの計画、あるいは事業戦略があって、その上に乗っかってきたら相当強いと思います。ですので、チーム名は「おもしろくないけど、ドミナントだよね、経営は」ということにしました。 ということで色々言いましたが、皆さん、今回の仕事で分かったと思いますが、実はローカルっていうのは日本のパイオニアです。日本の先端なのです。東京みたいな場所は、あえてグローバル経済圏においては先端にいるのですが、ローカルの世界においては一番後進地域です。いろいろなところで私も言っていますから皆さんも知っていると思いますが、先進国の経済というのは基本的にローカル経済が中心になっていきます。理由は簡単で、先進国というのは一人当たりのGDPが4万ドル~5万ドル以上の国です。日本は今4万ドルちょっとです。こういった国でグローバル産業が大きな雇用を生むってことは不可能です。単純にストレートに言うと製造業ですが。グローバル経済がたくさん雇用を持とうとすると組立型、製造業に依存することになります。一人当たりGDPは1万ドルが一番ちょうどいいです。だからもう一回日本が世界の工場になろうと思ったら、皆さんの年収を今の4分の1か5分の1にしたら、それはあり得ます。でも実際にそれはあり得ないです。今、半導体工場が熊本に出来ていますが、一番人がいるのは半導体工場を作っている期間です。出来上がると、半導体の工場には本当に人がいません。だから熊本で成り立つのです。ですので、実はこの国の経済をこれからどうしていくかの鍵を握るのは、このローカル経済圏のローカルビジネスです。 今日の皆さんの話はニッチに聞こえるけれども、実は日本の今のGDPで7割、雇用でいうと8割の議論をしています。今後、日本はそういう経済になっていきます。実はヨーロッパなんかはとっくにそうなっています。今日の議論というのはむしろ日本のメインストリームの議論なのだと思ってください。 今日参加した皆さんはそういう意味では、ある種の自信と誇りを持って今後も実際の事業活動に取り組んでいってほしいと思っています。 それからもう一つですね。これは僕ら自分たちでやっているので余計に分かりますが、今日みたいにインフラに関連する産業というのは、実は非常に共通項を持っています。アプリケーションは地域条件が違うので地域別に違います。ですが、本質的に重要なポイントは非常に横串で共通です。残念ながら多くの企業はこのことに気がついていない。その結果としてマラソンでいったらだいたい5時間とか6時間で走っている感じです。なぜみんながマラソンにハマるのかというと、マラソンは誰でも練習すれば速くなるからです。4時間、3時間と。2時間は才能がないと無理ですが、みんなが5時間で走っている世界で、4時間、3時間になるだけで競争優位性は確保できます。そして、ちゃんと収益も上がります。実はこれがローカル経済圏なのです。 私はパナソニックの取締役をやっていますが、パナソニックのフィールドは完全にグローバル競争なのでマラソンは2時間で走らないと絶対に儲からない。そういう意味でいうと、英語でLow-hanging fruitsと言いますが、地方は低いところにぶら下がっている果物がいっぱいあるのです。さっき木下さんが言っていましたが、本当にそうなのです。だからむしろ、そういった領域で頑張る。あと、先ほど付加価値労働生産性という言葉を言いました。付加価値労働生産性でいうと、ローカル経済圏のビジネス群、例えば今日のテーマである観光、交通、また不動産や建設、農林水産業もそうですが、先進国の中で一番生産性が高いところと比較すると、日本は全部約半分の生産性なのです。 観光業はスイスの半分です。ということは、日本は倍に上げられるはずなのです。日本人の能力はとても高い。なぜなら、サービス業で大切なのはデリバリー能力です。だから、この産業は繊細さとか、丁寧さとか、勤勉さが一番効くのです。バッとすごい天才的プログラミングの思いつきが必要ないのです。かつ、そういった大事なポイントの最低限をクリアするために必要なことにはかなり共通項があるから、ある意味DX的なものに馴染みます。基本的に勝ちパターンは共通です。勝ちパターンをローカルに合わせてちゃんと変数は変えなければいけないのですが、アルゴリズムはよく似ています。だから、実は横展開が可能です。私は、本当に真面目に70%分のGDPが倍にできると思っているのです。GDPは付加価値の総計なので、付加価値労働生産性が70%のセクターで倍になれば、本当に倍になります。ということは、30%と70%のうち、70が倍になったら140です。140と30で、170になります。今の日本のGDPは、7割増やせるのです。だから、もし皆さん機会があったら、私たちも岩井さんのところとかも大歓迎ですから、こういったローカル産業、ローカルビジネスの世界にむしろどんどん飛び込んでいってもらって、こういった世界で付加価値労働生産性革命に挑んでいただきたいと思います。 そして、今回は小樽商科大学が2位でしたけれども、JBCC自体も、来年以降、地方の大学からもどんどん参加していただいて、地方経済のリアリズムを持ち込んでいただき、地方経済の成長に邁進してもらえるような人材がこのJBCCからいっぱい輩出されることを私としては心から祈っています。 ちょっとコメントが辛口になったという話がありましたが、特に厳しかったのは実際にされている方が厳しかったのかなと思います。自分のリアルにとても近かったのでしょうがないです。みんなとても気持ちが熱いのです。みんな熱い思いを持って審査員やってもらえたと思っていますので、その辺は逆に言うと、僕らを熱くさせるだけのことをみんなが話してくれたからです。レベルが高かったからちょっと厳しかったと思って、ぜひプライドを持っていただければと思います。本当に一年間お疲れ様でした。 それから繰り返しになってしまいますが、グランドチャンピオンは早稲田ですがMore than グランドチャンピオンは毎年実行委員会です。改めて実行委員会の皆さんに拍手をお願いします。皆さんありがとうございました。ご苦労様でした。
株式会社経営共創基盤
共同経営者
マネージングディレクター
木村 尚敬 様
皆さん、本当に大変お疲れ様でした。 私はケースの作成から運営に携わっていますので、全体の講評もさせていただきたいと思います。2023年大会のキックオフは1月から始まっており、ケースを作るために約半年くらいかかるという非常に膨大なプロジェクトです。ケース作成班の私としては一番嬉しいのは、今年のケースが難しかったと言われることです。あと打ち手がバラエティーに富んでいることは、非常に皆さんに考えていただけるので、私としてはしめしめと思う瞬間です。それと今年の参加数は152チーム708名ということですが、何より嬉しかったのは27校という今までの参加学校数で最高数を記録しています。ということで、この活動がどんどん広がっていけば私としても嬉しい限りです。 ケースの内容に目を転じます。ケースのテーマを決めるのが実は一番難しく、これは実行委員会の方と3回か4回ぐらい打ち合わせをするまで決まりません。今回、地方でコンセッションというテーマを選択しました。実は論点がたくさんあります。 一つは地方が抱えている課題。人口減少ですとか、高齢化といった問題。皆さん、指摘されているチームもありました。それから、アイヒメという会社が抱えている課題。複数事業をしていて、足元の業績が良くない事業もたくさんあります。それから持ち込まれたコンセッション。これをスタンドアローンで見たときに、そこまでバリューがついている事業ではないというところで、これをどう捉えるかという課題があります。 これに対して152チーム、私もレポートを見ておりますが、ほとんどのチームがコンセッションをやるということが打ち出の小づち的な施策になっていて、それをやると全ての問題が解決しますというレポートが結構多かったんですよ。ただ、先ほど申し上げた、複雑に絡み合っている要因の中で、何が解けて何が解けていないのか。解けていないことは、ある程度優先順位を下げてもいいことなのか。そうじゃないことなのか、ということを考えていただいて。要は課題の構造化をしっかりしていただき、全てに対応はできないので、どの順番でどのように問題解決をしていくかというところを考えていただきたいのが、まず一つ目の話です。 二つ目の話がエコノミクスです。途中に質問しましたが、まずこの事業を単体で見たときのアイヒメの事業がどう成長戦略で伸びていくかと、それに加えてコンセッションをやったとしても、コンセッションに15%の出資比率で入る、そのエコノミクスも必要です。当然我々がそこに入ることにより、皆さんが作られた新しくアドオンするところも含めたバリエーションで、そもそも経済合理性が合っているか、いないか、というところもしっかり見極めないと、経営としての判断はなかなかつかないところがあると思います。 また、先ほど木下さんからも話がありましたが、これは所詮15%しか持たないわけです。だとすると、それをやる意味合いや、経済合理性などは、明確にしておかないといけないです。場合によってはこの建付けでやるならば、例えば株主間契約で絶対差し込んでおかなきゃいけないことなど、かなり解像度の高いところまで議論していただけるとよかったと思います。やはり打ち出の小づちみたいなところに、皆さん、すがっていたところがあったのかなと思います。 あと、今日のもう一つの隠れたテーマは共創ですよね。地方創生×共創ということで、アライアンスできる先のリストがあったと思いますが、あの中でいろいろな買収するとか提携するというテーマもあったので、非常に良かったんじゃないのか、と思います。 今日のところでコンセッションを終わりまして、明日からまた私の頭は、来年何にしようかなという風に動き出します。本当に大津さんをはじめとしたケース制作チームの方、大変お疲れ様でございました。 それから、会の全体の運営をしているこの実行委員会。これもケースだけではなくてスポンサーさんの対応や参加チームの対応も非常にオペレーションが複雑で大変だったと思います。 実行委員長の有森さんをはじめとして、実行委員の皆様、大変お疲れ様でございました。私からの総評はここまでとしたいと思います。
株式会社 日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
本部長代行
石田 直美 様
今日は初めてこういった会に参加させて頂いたのですが、皆様の堂々としたプレゼンテーションであるとか、またそれぞれのグループの尖った戦略にそれぞれ特徴があって、大変面白く聞いておりました。 私は20年ぐらいずっと官民連携事業というのをやっておりまして、コンセッションもその一つなのですが、その中で営利を目的とする民間企業が自治体や国とどう連携するかというのは、すごく難しいテーマです。ですが、これからの地方創生は、そこが避けられない話で、条件不利な地方において民間が担える事業をどう作っていくか。皆さん、アイヒメが自分で・自力で何とかしていくんだというのは素晴らしいと思うんですけれども、もっと自治体とビジョンを共有し、協力を引き出すことで、官と民とが一緒になって1+1を3〜4にしていくかみたいな、そういうちょっとずるい話があってもよかったかなと、私の経験の中では感じました。 皆さんのプレゼンテーションと戦略が本当に素晴らしくて感動しました。是非、今後もいろんな地方の課題に目を向けて考えていただけたらと思います。ありがとうございました。
事業創造大学院大学
客員教授
フリーキャスター
伊藤 聡子 様
出場者の皆様、そして実行委員会の皆様、本当にお疲れ様でした。152チーム中のトップ5ということで、本当にそれぞれが素晴らしく、甲乙つけがたかったです。これを構成するためにどれだけ睡眠時間を削って今日は来られたのかなということを思うと、本当に皆さんにそれぞれに賞をあげたい気持ちになりました。 結果としては早稲田大学のケースですね。アイヒメ自体の持続可能性と、それから地域にとっての持続可能性ということを考えたときに、参加しないというのは非常に冷静な判断だったなと思いますし、素晴らしいと思いました。 ただ、皆さんプレゼンしていただいたように、愛媛って本当に瀬戸内海の風景自体がまず素晴らしい。これは世界に誇れる観光資源としてやはりすごく高いものがあるんですよね。そして食をテーマに発表してくださったところもありましたけれども、食もフルーツ一つとってもみかんだけではなくて色々あるんですよね、海の幸も最高だし。そういう意味ではそのポテンシャルをどうやったら活かせるのかということを真剣に考えてプレゼンをしてくれたということが私も感激しましたし、これはコンソーシアムに参加してもしなくても、絶対伸ばせる要素として非常に大きいのかな、というふうに思いました。 私自身、地方創生とか地域経済の活性化ということをテーマに研究活動しておりますけれども、地方は本当にポテンシャルが高い。でも課題がいっぱいある。それは課題の数だけ可能性があるということでもあり、これから地方が直面することというのは、20年後には必ず東京も直面することで、そこに関わっていくということはビジネスのリーダーとしての視点を養えるという意味でもあると思いますので、これから何か起業をされるというところもあるかもしれませんけれども、地方と何か関わって一緒に盛り上げていくという、その精神はぜひ忘れないで頑張っていただきたいな、というふうに思います。本当にお疲れ様でした。
東急株式会社
常務執行役員
岩井 卓也 様
皆様、お疲れ様でした。すごく難しいケースでしたよね。そもそも事業が3つもあるところに4つめを検討する課題でした。このケースを700人以上の参加者の皆様に取り組んでいただいたのは、この事業の担当として、東急の財産になったのではないかと思っております。私自身、伊豆急行や上田交通などを担当し、日々こういった問題に悶々としているので、それを共有できたことに、何か嬉しい気持ちがあります。 今回、空港に参加しないというチームが優勝しました。堂々たる優勝でした。最後まで厳しい事を言いますが、なぜそのチームに勝てなかったのか?空港を経営していた立場から言いますと、ほぼほぼ皆さんの提案で書かれていなかった事が二つあります。 1つめは、空港会社というものが突然世の中に現れてエアラインに営業に行く。DMOと聞くと儲からないイメージですが、これはDMOをやりながら儲かるという主体が突然現れるという事なのです。ここに気づいていただければ、「フリーライドすれば良いのでは?」という質問に対して、もう少し違う答えになったのではないかと思います。 2つめは、安全マネジメントです。安全マネジメントの観点において、鉄道会社・バス会社は非常に秀でています。そこは堂々とアイヒメの競争力としてコンソーシアムの中で訴えられたのではないかと思います。 この2点を踏まえた提案があれば、もしかすると結果は変わっていたのかもしれません。しかしながら、コンセッションに出ないというのも素晴らしい論理構成で堂々たる優勝でした。おめでとうございます。
株式会社南紀白浜エアポート
代表取締役社長
岡田 信一郎 様
参加者の皆様、本当に大変お疲れ様でした。また実行委員会の方々、大変お疲れ様でした。 今回の題材が空港コンセッションという正直極めてニッチな、わたしはこれを10年位やっているのですけど、極めてニッチなマーケットの中、参加者の皆様が一生懸命分析頂いて、実行委員の方もきちんとケースを、私も横でケースをアドバイスさせて頂きながらだったのですが、良いケースを作って頂いたと思います。本当にそういう意味では、空港にスポットが当たって嬉しいなという所ですね。 今日のテーマ、皆さん仰っておりましたが、空港というのは、人を招く所なので、今回、愛媛が題材になったというのはある意味ご縁なので、是非愛媛にも行って、かつ和歌山にもお越しください。一応、先進事例と言われております。 やはり地方にはいろんな宝が眠っていて、日本人あるいは地域の人ではわからない圧倒的な価値観、高い価値で提供できます。最近、和歌山、熊野にも超富裕層が来ていて6人 2泊3日で300万くらい使う。そういう方がいらっしゃるようになってきています。そういう眠れる資源がいくらでもあると思うので、是非そういうものも使いながら空港ゲートウェイを活性化できると思います。是非、愛媛、和歌山に行ってみましょう。よろしくお願いします。ありがとうございます。
株式会社コーポレイト ディレクション
代表取締役
Managing Director
小川 達大 様
皆さん、お疲れ様でした。実行委員の皆様も大変ご苦労されたと思いますがお疲れ様でした。JBCCは何度か関わらせて頂いていますけれど、年々、素晴らしいイベントになってきていると思います。今年はいつもより審査委員の方々が怖かったです(笑)それは思いました。やはり実際にやってらっしゃる方々がコメントされているので、「うちやっているんだけど」という枕言葉をつけられるとグウの音も出ない状態になりますよね。ちなみに他の審査員の方々も緊張感があったので自分もちゃんとした事を言わないと、とプレッシャーが高まっていたと思います(笑) 今回、グランドファイナルの5チームを拝見させて頂いて、小樽商科大のチームは凄く自分事に捉えていらっしゃるのが素晴らしいと思いました。実際、愛媛の方にもいらっしゃって、多分小樽からの旅費と愛媛出張だから優勝賞金30万円をとらないとペイしないだろうなと思っていたのですけど(笑)それが本当に素晴らしいなと思いました。 全体5チームを見渡してみた時に特に地方のビジネスだからという事もあると思うのですが、人と金の経営資源の制約が凄く大きいという所があるかなと思いまして、そこのトランスフォーメーションの丁寧さ、この詰めが早稲田大学チームは抜きんでていたので選ばせて頂きました。 最後に、この5チームだけではなくて全体を通してですが、富裕層からお金を頂く時に、それが日本とインバウンドと両方あると思うのですけど、その時の単価感が明らかに低いなというのはすべてに対して思いました。宿泊であれば50万円、100万円をとるってどうやるのだろう?とか、飲食であれば20万円、30万円をとるのはどうするだろう?とか。そういう世界が広がっていて、そこに地方の素晴らしい資源が活きていくことがあると思うので、そのあたりの目線は特にMBAに関わっている人たち全員が上げていくということが、日本をより良くしていくと思いました。本当にお疲れ様でした。
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス
代表理事
木下 斉 様
どうも皆さんお疲れ様でございました。厳しい講評がJBCCの売りだと聞き、激辛モードで行きました。しかしながら、もうコンペは終わりましたので、この後、皆さんおいしいドリンクでも飲んで、仲間同士、また戦った戦友と盛り上がっていただければと思います。 私は高校3年の時に、全国商店街の共同出資会社を設立して仕事を始めました。その上で大学卒業後に一橋大学大学院のMBAコースで学ぶ時間を得ました。そのため、仕事が先、学びがあとでした。だからこそ学び得ることが多かった様に思っています。 一つ、是非皆さんに感じていただきたいのは、今回の地方のテーマについてです。やはり地方にもっと皆さんに行っていただきたいのです。同じ日本でも全く違うロジックで、今、可能性の歯車が回り始めているというところを実感していただきたい。地方は日本でも先端的に少子高齢化が進む中で、需要の減少より就業者減少が先に進捗した供給制約社会をいち早く迎えています。そういう中でどう会社経営をしていくか、というリアリティが今回はさらに必要だったと思います。より現場に出ましょう! ビジネススクールというのは、どうしても、こういう与えられた条件に合わせて、プランを考えて、競うって話だと思うんです。机上の枠を越えて現場に行くからこそ気づける発送、着眼的をもって、ぜひ次は挑戦していただけるとすごくありがたいなと思っております。 さらに地方を一つの会社と見立てて経営する視点があれば、今回のプランの中で15%の出資で入るというコンセッションの条件に誰かしら疑問を呈するチームが出てきてほしかったところです。地場資本企業がマジョリティをもってこそ、域外収支も改善し、利益も地元に再投資され、しかも継続的に経営がなされる条件となります。 このように前提条件とかは疑う力が大切になります。もっとルールに従いすぎないように! 実際の市場においては所与の条件などありません。自ら考え、実践した者勝ちです。皆様が、コンペではなく実践を通じて日本、世界に貢献する経営人材になられますことを心から期待しております。 ありがとうございました!
株式会社 ダイヤモンド社
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 編集長
小島 健志 様
皆様、大変お疲れ様でした。非常に刺激的で、興味深いお話をたくさん伺いました。また、実行委員の皆様におかれましては、一年にわたるご準備、本当にお疲れ様でした。 我々、『ハーバード・ビジネス・レビュー』は、ハーバード大学の経営大学院の機関誌として約100年前に始まった媒体です。ビジネスリーダーである読者の方々は、普段からとても悩まれ、壁にぶつかっています。その中で我々のような雑誌を手に取っていただき、実践と理論を往復することで解決のヒントをつかんでいます。皆様もいろいろと悩み、考え、行動されてきたと思いますが、今大会を通じてそれまでの知識が「思考の軸」となったことかと思います。この場をぜひ次につなげていただきたいです。 また、審査において、松山商工会議所の中矢斉事務局長にご協力いただきました。愛媛県を題材とする今回の発表を会場で聞き、非常に喜んで帰られました。今大会が地域貢献につながることを証明する、素晴らしい取り組みだったと思います。 皆様の今後のご活躍を心よりお祈りしております。本日は本当にありがとうございました。
PIVOT株式会社
代表取締役社長
佐々木 紀彦 様
今日は皆さん、ありがとうございました。 普段はスタートアップとかそういうピッチ、自分たちの事業計画を述べるというピッチが多かったんですけど、JBCCは同じケースで皆さんのいろんな視点を聞けるというのが非常に新鮮でした。 そして、これを見終わった後に愛媛に行くかどうか悩んでいたんですけど、ぜひ木下さんにデスティネーションレストランを案内していただこうかな…と。本当にぜひ行きたいなと思います! あと、木下さんと一緒なのですが、私は故郷の北九州市のアドバイザーを務めていまして、こういう地域をテーマに皆さんのアイデアを募るというのは、すごくいい枠組みだと思っています。次回は私も企画を持ってきますので北九州市をテーマにやっていただけるとありがたいなと思いました。 本日はありがとうございました。