第16回 JBCC2025 開催報告
-Event report-

第 16 回目を迎えた日本ビジネススクール・ケース・コンペティションは、東京大学安田講堂にて本選大会を開催いたしました。
今年のケーステーマは、物流業界における「同意なき買収」。太陽総合商事から突然のTOB を受けた菜の花運輸を舞台に、社長・白川の意思決定を通じて、資本市場への向き合い方と企業の存在意義について各チームが考え抜きました。
11 月 30 日の本選では、予選を勝ち抜いた 20 チームが午前中にセミファイナルに挑み、その中から選ばれた上位 5 チームが、グランドファイナルに進出。日本産業の第一線でご活躍されている豪華な審査員 7 名を迎え、実際の経営会議さながらの緊張感あふれる質疑応答が繰り広げられました。
第16回開催概要
-Competition Summary 2025-
本選開催日程
2025年11月30日(日)
本選会場
東京大学 安田講堂(GF) 教育学部棟(SF)
主催
NPO法人 日本ビジネスケースコンペティション実行委員会
予選参加チーム
17校、126チーム(592名)
本選参加チーム
10校、20チーム
来場者数
540名
ケーステーマ
「情と理」創業家が支えてきた会社への敵対的TOBに対する経営判断
後援
文部科学省、金融庁、経済産業省、金融庁、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本商工会議所、日本取引所グループ
特別協賛
株式会社 経営共創基盤 (IGPI)、株式会社ダイヤモンド社
協賛
(ダイヤモンドパートナー)think-cell Japan 株式会社、株式会社 Tech0
(プラチナパートナー)株式会社インター・ビジネス・ネットワークス、株式会社トリプルバリュー、株式会社中島商会、ユニクル株式会社、NTT アドバンステクノロジ株式会社、株式会社 AIST Solutions
(ゴールドパートナー) 株式会社グローバルインフォメーション、株式会社コーポレイトディレクション、株式会社ロングリリーフ、株式会社 HAMAYA、问峰途教育咨询有限公司、森田化学工業株式会社
協力
株式会社 CAMPFIRE、株式会社 PANDASTUDIO.TV、株式会社ダイケンフードソリューションズ
後援/協賛
-Support/Sponsorship--
本選結果
-Competition results-
優勝

グロービス経営大学院 オンライン校 鈴木 重嘉 チーム
準優勝

グロービス経営大学院 混成 林 祐貴 チーム
トリプルバリューエンゲージメント賞
グロービス経営大学院 混成 渡辺 信之チーム
本選出場チーム(★ … グランドファイナル進出チーム)
セミファイナル A ブロック
青山学院大学大学院 高橋 将方チーム
マサチューセッツ大学大学院 小林 直也チーム
混成(青山、早稲田、グロービス) 江蔵 瑠美チーム
グロービスオンライン校 鈴木 重嘉チーム(★)
セミファイナル B ブロック
グロービス東京校 副島 伊都子チーム
グロービス混成 林 祐貴チーム(★)
グロービス東京校 脇坂 洋二郎チーム
早稲田大学大学院 堀江 真央チーム
セミファイナル C ブロック
グロービス大阪校 荒木 大輔チーム
グロービス東京校 松井 直毅チーム(★)
立教大学大学院 森 一輝チーム
立教大学大学院 安藤 豪チーム
セミファイナル D ブロック
グロービス東京校 大村 尚弘チーム
早稲田大学大学院 越智 才華チーム
グロービス名古屋校 浅井 建哉チーム (★)
グロービス東京校 北川 雅弘チーム
セミファイナル E ブロック
グロービス東京校 河村 茂哉チーム
九州大学大学院 松藤 祐一郎チーム
グロービス混成 渡辺 信之チーム(★)
SBI 大学大学院 寺井 学チーム
受賞コメント
- Award Comments -
大会優勝・準優勝チームには後日「チームインタビュー」を実施しましたのでその内容を公開します。
優勝・文部科学大臣賞
- グロービス経営大学院 オンライン校 鈴木重嘉チーム -

<優勝チームインタビュー>
Q:優勝が決まった瞬間の率直な気持ちについて教えてください。 A: (鈴木さん)びっくりしました。「僕たちのチームなのか…。審査員からの質問にダイレクト、シャープに答えられず、他チームに対し見劣りした感触があったので、期待していなかった。」というのが率直な感想でした。 もう一回質疑応答をやり直ししたい、と終わった直後はそんな思いが強かったです。特に冨山さん・木村さんからのブレイクポイントについての質問に対しては、チーム内でも議論した気がしましたが、まだやり切れていなかったと振り返っていたところでした。 (中居さん)特別賞受賞を逃したタイミングで、敗退したと思っていました。受賞の実感が無く、悔しさも残っていました。主に質疑応答で悔しさが残っており、株主の視点で議論がやり切れていたのか、突っ込んだ議論不足だったと思います。 (大谷さん)他チームのプレゼン、質疑の切り替えしが素晴らしかったと、意気消沈していました。 (鳥越さん)受賞時のビックリ表現が他チーム比で大きかったと友人から言われました。やはり質疑応答での構えが不十分だったと思っています。 検討を進める中での意思決定時の判断が遅かったと反省しています。実務の中でも判断速度が求められることを実感することができて、学ぶ価値が大きかったです。 (山本さん)自分達の考えをまとめるまでは深掘りできていましたが、その後他者からの様々な視点に立った質問などへの準備が不足していました。 様々な着眼点にたった理論構築の重要性を感じることができたのは、今大会のお陰だったと思います。 またJBCCでの活躍により、家族の理解も得られ、周囲の理解も進みました。 Q:大会に取り組むことを決意した理由を教えてください。 A:JBCC2024に出場したメンバーで議論しました。JBCC2024ではファイナリストとの差を痛感し、「めっちゃ悔しい!」とリベンジを決意し参集しました。 今回は2024メンバー3人に加えて、更にシナジーが発揮されるよう最大人数の5名まで、新たなメンバー2人を声掛けし集めました。 Q:大会に向けて、どのように準備を進めてこられましたか? A:JBCC2024メンバーは実務や家庭で昨年より変化があり、思う存分時間が確保できませんでした。 実務での職場異動により、ストレスが上がり体調万全ではなかった時もありました。さらに今年は職種が変わったメンバーもいて、十分な調べ物やタスク処理ができない中、出張や会社行事などが重なり、大会直前でも出張先から参加したメンバーもいました。また0歳の子育て奮闘中のメンバーもおり、打ち合わせには赤ちゃんを抱っこしながら参加していました。 その結果、当初描いていたスケジュールよりも後ろ倒しており、質疑応答など多岐に渡る視点に対して、深堀りするのが甘くなってしまったと思います。 Q:チームとしての強みは何でしたか?困難な状況を乗り越えたエピソードも教えてください。 A:戦略の実現可能性・・・昨年も参加していた経験を活かし、予選資料の作り方や本選に向けての議論深堀り、論点を網羅的に抑えてチーム議論を進めることが出来ていました。特に『戦略の実現可能性』はこだわり、地域ごとの配車数など、実際の会社のように細かく仮定を置き発表に臨みました。また実際に物流業界の展示会に足を運び、『AIを用いた配送方策』について実務の方へのヒアリングを行うことも、戦略のリアリティを生むことに活きたと思います。 自己開示と他者の尊重・・・チーム開始直後から、お互いの成績表を開示し合うなど、『お互いの自己開示』に注力しました。それを受けて、戦略・組織・財務・壁打ち役など、お互いを尊重したチーム作りができました。意思決定プロセスも、多数決に甘んじることなくチーム全員が納得できるまで議論することを大切にしました。 オンオフラインを活用した議論の効率化・・・チャットベースで積極的な意見交換を行うことで、時間の効率化を推進しました。 予選から本選資料提出までで合計26回×2~3時間のMTGを実施しました。仙台・名古屋・埼玉・島根と、チームメンバーが日本全国に散らばっているので、リアルに会うのは前日のみでした。 分かりやすい言葉選び・・・プレゼンの分かりやすさ、メッセージとボディーが合うこと、伝えられる立場に立ったプレゼンと原稿にはこだわりました。 チーム内の信頼関係・・・「7,000円!」については自分が財務を見ていたこともあり言い切りました。言い切った直後は、メンバーの顔を見ることはできませんでしたが…笑 メンバーにはよりベストな答えもあったのでは?との意見もありましたが、「重さんが言うなら!」と瞬発的に定量的に答えることができ良かったと思っています。 思考はクールヘッドで判断できていたところが、評価されたのだと思います。冨山さん・木村さんとも大会後にお話しさせていただき、TOBされている状況を受け止めたうえで「自分達なりのロジックを考え抜くこと」の重要性を教えていただきました。 Q:この大会を通じて得られた最大の学びはなんでしたか? A: (山本さん)今回の挑戦を通して新しいチームワークの在り方を学ぶことができ、今後活かしていきたいと思いました。 想定質問に関しては、「様々な視点で考えることができるか」が大事だと思います。一方で想定外の質疑に対して、対処法を考えとくと良いと思います。 (中居さん)10月から経営企画へ異動し、より全社的な目線で実務をすることが求められている中で、様々な関係者の視点も踏まえ「思考の限界を超えて」思考することの重要性を感じることができています。大会を通してご指摘のシャワーを浴びるいい経験ができました。優勝後はJBCC優勝者という肩書きをプレッシャーに感じています。 また自己開示(成績の開示や家庭環境の共有)を行うことが。チーム員のより強固な結束を高めることに繋がったと感じます。 (鳥越さん)自社がM&Aされた時期と被っており、実務とケースを行き来していた4ヶ月でした。その中で、M&Aされた自社も少しづつ変化できていることを体感できており、「TOBされた会社は社風変革ができるのか?」という問いに対してはリアリティをもって回答ができました。 視座の高い仕事に私自身も魅力に感じてきており、一方で自分の不足分も実感できているので、新しい学びの場を探していきたいと思っています。 それぞれの強みを寄せ集めて活かすことで、いいチームワークができあがると実感しました。 (大谷さん)ケースを解くことを通じて、経営は一人ではできないことを感じました。皆が揃ってこそ、財務、戦略など実現できるアウトプットの幅の広さを体感しました。メンバーの多様な視点を総動員させることが重要だったと思います。 また学びの機会を提供するJBCC実行委員には魅力を感じています。 JBCCは学生にとってはMBAで学んだことを繋ぎ合わせる『実践の場』として、またチームメンバーとは『戦友』として人との強い繋がりを持つことができます。社会人になってここまで熱くなれる機会はなかなかないので、「大人があんなに一生懸命になっているのっていいよね」と家庭からも理解を得られることに繋がると思います。 (鈴木さん)この大会を通じて、大きく3点得られたと思います。 ・やり切った経験と自信。 ・思考のプロセスの体系化、人的ネットワーク。 ・審査員、他大学、実行委員などとも繋がることができる。 来年に向けては、JBCCには創る側として関わっていきたいです。真剣勝負の場であることと他人の思考を垣間見る貴重な機会でもあることから、中期的には審査員になってみたいですし、いつかはGFの審査員を目指したいです。 現役の学生の方にとっては、このJBCCはMBAを学ぶことを血肉化する実践の場として非常に良い場だと思います。さらに、違うキャリアの方との経験も得られることも魅力です。 実務で中計を作る中でも、今回の学びを通して体系的に情報を整理できたことは今後にも非常に活きると思っています。皆様も是非、JBCCチャレンジしてほしいです。
準優勝
- グロービス経営大学院 混成 林 祐貴 チーム -

<準優勝チームインタビュー>
Q:優勝が決まった瞬間の率直な気持ちについて教えてください。 A: (林さん)優勝を目指していたため、名前を呼ばれた瞬間は「大会が終わった」という安堵感がありました。一方で、優勝できなかった悔しさやもどかしさが混在する、複雑な心境でした。 (山本さん)グランドファイナル進出チームの発表時が最も嬉しかったです。本選中は「フロー状態」に入り緊張はしませんでした。準優勝という結果には悔しさがあり、公式写真でも視線が上を向いてしまっています。 (齊藤さん)予選通過や決勝まで進んだこと自体が予期せぬ出来事であり、驚きが強かったです。壇上では動揺を隠し、平然を装うのに必死でした。 Q:大会に取り組むことを決意した理由を教えてください。 A: (林さん)昨年も安珠さん(齊藤さん)・清水さんと出場しましたが、予選落ちしており、そのリベンジと「ラストチャンス」という思いで優勝を狙って参加しました。 (山本さん)ビジネスコンテスト等には当初興味がなかったのですが、林さんに誘われ参加しました。結果としてJBCCのファンになりました。 (兒玉さん)大学院の授業タイミングと重なり多忙でしたが、「迷ったらやる」という信条のもと、林さんの誘いを受け参加を決意しました。 Q:チームとしての強みは何でしたか?困難な状況を乗り越えたエピソードも教えてください。 A:議論が進捗しない時期もありましたが、「停滞期に関係性の質を落とさないこと」を意識し、乗り越えました。オンラインだけでなく、朝から夕方まで集中的に行う「合宿」を3〜4回実施し、これにより進捗が飛躍的に伸びたと感じています。 役割分担は決めてはいましたが、全員が全体に対して意見を出し合うスタイルをとりました。オンラインなだけに、徹底した議論を優先していました。 ユニフォームに関しては、戦略上の「ブランド刷新」を体現するため、林さんがドン・キホーテで見つけたポロシャツ(550円!)に、友人の刺繍屋でロゴを入れた特注品を着用しました。 Q:この大会を通じて得られた最大の学びはなんでしたか? A: (山本さん)知識を実践に結びつける難しさと重要性を痛感しました。MBAの学びが実務に近づいた感覚を得ました。 (齊藤さん)チームメンバーの強みを見ることで、自分自身の貢献領域や改善点(伸びしろ)に気づけました。また仲間と一生懸命取り組むことの楽しさと達成感を味わいました。 (兒玉さん)会計のプロとして、専門知識をわかりやすく伝えることの難しさを学びました。さらに、信頼関係の上で「言いたいことを言い合える」チームビルディングの重要性を実感しました。 Q:来年の抱負や今後の目標を教えてください。 A:JBCC2026実行委員への参加を考えており、メンバー全員が次年度の実行委員に立候補しました。これは自分たちの経験を次世代に還元したい、大会をより良くしたいという強い思いがあったからです。 またビジネスでの実践を実現したいと思います。JBCCで得た「仲間と共に熱量を持って取り組む」姿勢を実務でも展開したいです。 卒業生が輝いている姿を見せ、後輩への刺激になりたいと思っています!
審査員講評
- Judges' Comments -

【審査員長】
株式会社日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役会長
冨山 和彦 様
はい、皆さんお疲れ様でした。本当にお疲れ様でした。ほぼ皆さんおっしゃったことと同じ感想で、多分16回目で今回が最後の5チーム、多分一番差がつかなくて、自分で実は順位はつけたんだけど実はちゃんと覚えていないんです。そのくらい差がなかったということです。 これも毎回言っているのですが、セミファイナル以降の人たちは差がないと思ってください。皆さんが持っている能力という意味では、十分に自信を持ってもらっていいと思います。ビジネススクール的レベルで言えば、もうみんな「優」というか「Aプラス」がつくレベルだと思っていただいて全然大丈夫、自信を持ってください。 その上で一応講評すると、おおよそビジネスの議論としては、概ね皆さんが素晴らしい分析をされていて、そうなんだろうなと思って聞いていました。ちょっとだけお小言っぽいというか細かいことを言うと、皆さん「規模の経済性」という言葉をちょっと安易に使いすぎです。本当に規模の経済性が効くのだったら、とっくに物流業界は上位3社くらいに集約しているはずなので、そう簡単には効かないんですね。物流業というのは、簡単に効かないんですよ。これ田口さんも同じことを言うと思うのですが、そうシンプルではないんです。 どちらかというと経済性を支配するのは「規模の経済性」よりも「輸送密度の経済性」です。例えば分かりやすくソフトウェアだと、ゲームを作ってそれが1万本と100万本なら100倍のコスト差になりますが、トラックが1台から100台になっても100分の1にはならないんですね。だからそういった意味の規模の経済性は効きません。もっと違う経済性です。 もう1つ、重要な要素がさっき田口さんが言われていた「付加価値統合力」で、この2つのゲームをどうやって輸送密度を上げられるかというゲーム、まさにさっき田口さんがドンピシャ言っていたのですが、流石ですね。この経済性の議論はすごく大事なので、ここへの掘り下げは常にやっておかないと、地に足がついていない戦略になってしまいます。 先ほどの資本市場の議論。会社の基本統治原理というのは「資本民主主義」なんです。これはどこまで行っても会社法上、資本民主主義なんですね。資本多数決で決まるんです、経営支配権というのは。これは国で言えば総選挙に勝たないと少数与党になってしまって総理大臣を辞めるのと同じで、もうそういうものなんです。良くも悪くも情も理もへったくれもなくて、要するに基本統治原理なのでしょうがないんですよ。これ嫌だったら株式会社を辞めるしかない、一般社団か公益法人か組合にするしかないんで、株式会社である以上はそういうことなんです。 今まで日本はどちらかというと、この資本民主主義に上場企業がさらされていなかった国なんです。これは2つポイントがあって、「政策保有株」というのが分厚くありまして、要するに物言わぬ与党株主がたくさんいた。黙って何でも賛成してくれたので、毎回選挙をやると必ず与党が勝ちますという仕組みだった。これが1つ。 もう1つが取締役会。全員自分の部下ですから、取締役会に突然反乱を起こされて社長がクビになるなんて、よっぽどひどいことをしない限りまず起きない。二重の内堀・外堀、深い堀があったんですね。これが浅くなってしまったんですよ、最近。政策保有株も相当減りました。社外取締役も当たり前になりました。 これは私が20年間真剣にやってきたコーポレートガバナンス改革でありまして、だいぶそういうことになってきています。ですので、特に上場していれば、それが一般の株主の意向にさらされる。TOBもそうですよね、解散総選挙みたいな状態になるわけです。 この問題から目を背けてしまうとダメだということで、この会社も突然その問題にさらされてドタバタしていますが、だったら「なんであんた上場してたの?」という問いが来ます。10年前だったらだいぶ反発があったけれど、今ハッキリ言って日本の社会でこれに反発はありませんから、むしろ経営陣が悪いのではないかということになるので。平時から、上場している以上は政権交代があるのだと。株主総会で社長が打ち落とされることもある、そういうことが起きる。 これは否定してもしょうがないですよ。嫌だったら上場辞めるか組合にするしかない。憲法中の憲法なので、それは覚悟してやってください。 そうなると物事の判断というのは極めてクリアで、資本市場というのは基本的には「儲かるか儲からないか」で動いている資本主義ですから、判断は絶対的に「クールヘッド(冷静な頭脳)」です。「理」です。意思決定はクールヘッド。エグゼキューション(実行)の相手は「ウォームハート」です。これをひっくり返す人がいるのですが、実行をクールヘッドでやると必ず会社は崩壊しますから、ここは間違えてはダメです。 長期的な時間軸に置けば当然、企業価値の源泉というのは、中で働いている人がどれだけの価値を生み出すかなのだから、その人たちの価値観やゴールが一致していないと上手くいかない。でもそれはあくまで、結果的にキャッシュフローに具現できるから資本市場における資本多数決で勝てるんです。この現実は絶対に忘れてはダメです。正直言って日本が今更元に戻ることは100%ないので、上場する時は覚悟してください。 個別チームの講評に入ります。 1チーム目(チームE:渡辺チーム)。一生懸命で自分目線で「こうしたい」という話が、ちょっと独りよがり的なところがあって、思いは熱いけれど客観的目線がちょっと足りない。総理大臣が選挙民の目線を無視してこうしたいと言っているようで、麗しいけれど実際資本市場と対峙しようとすると結構大変かなという印象でした。チーム名は「チーム漫画」ということにします。 次のチーム(チームA:鈴木チーム)。TOB受け入れですね。このチームに関しては、現実的なゴールへの収束という意味では一番収束しやすい選択肢を選んでいる。なので何となくスムーズ感があったのですが、ちょっと覚悟が足りないプレゼンテーションだったので、現実あんなにすんなりは行かない。その時にどうするのかがすごく重要です。 とりわけ、あの局面で本当のボスは誰なのかというのは結構難しい。今の株主共同の利益がボスのように見えるけれど、今の太陽商事が当然にボスかというとそうではない。また太陽商事に見売りすると決めちゃえば、あんまり高くない価格で買ってもらった方が実は楽なんですよ、やっている本人たちは。ああいう瞬間は非常に利害関係が錯綜するので、相当覚悟を決めて掘り下げておかないと突っ込まれてしまう。チーム名は「私の本当のボスは誰?」というチームにします。 3番目のチーム(チームB:林チーム)。拒否をするという選択でしたね。経営改革を死ぬほどやっていた立場からすると、人間なかなか豹変しないんですよ。できなかった人が心を入れ替えれば急にできるということはない。凄くなれるのなら全員大谷翔平になれるわけで、そういうことは現実に起きない。その辺に対してちょっと楽天的な感じはしました。「お前が言うな」攻撃に遭うことは間違いないので、チーム名は「君主は豹変しますか?」というクエスチョンマーク付きにします。 4番目のチーム(チームC:松井チーム)。MBOですね。時間の問題が重要で、限られた時間でスポンサーを呼んでこなければならない。果たしてそれだけの時間があるのか、ないのだったらどう「作るか」を提案されていないと空しい選択肢になります。買い手側からすると投資委員会を通さなければならないしデューデリもやらなければならない。お金を出すのは簡単ではありません。そう簡単には求愛活動をしても恋は実りません。チーム名は、シュープリームスのヒット曲で「恋はあせらず」とします。 最後のチーム(チームD:浅井チーム)。ホワイトナイトですね。ああいう同業他社をホワイトナイトで持ってくるのはオーソドックスなパターンですが、あの18%の微妙な第三者割当増資は、ちょっと「昭和」な感じなんですね。僕自身、仮差で止めたこともあります。今は止まります、かなりの確率であの案は。入り口の分析は良かったけれど、保身したい感が出すぎてしまっている。感情的にけしからんというのが先行してしまうとああいう風になりがちなので。裁判所も合理的になってきているので、あの案はあそこで間違いなく潰されるパターンだったのと、そもそもNXがそんな中途半端なものを出してくれないのではないかな。今、出し手の側も差し止めやレピュテーション(評判)を気にします。そこは残念だったのでチーム名は「バック・トゥ・ザ・昭和」にいたします。 色々述べましたが、皆さんは本当によく頑張ってくれたと思います。 最後に、安田講堂という場所で「志」について。安田講堂は安田善次郎さんが寄付して作られました。安田財閥の始祖ですね。匿名で寄付をしていたせいで慈善活動が知られず、「守銭奴」と誤解されて暗殺されてしまった方です。彼は明治の「ミスター・アニマルスピリッツ」であり、日本の近代化を引っ張った人です。 政府がお金を使ったら経済成長するという幻想を持っている人がいますが、それは間違っています。中国も政府主導と言われますが、実際はめちゃくちゃなアニマルスピリッツを持った優秀な連中がいっぱいいて狂ったような競争をやっているんです。そこに政府がお金を付けるから伸びる。逆はないんです。 民間企業人がアニマルスピリッツを持ってめちゃくちゃ頑張って競争することが、国の成長や豊かさを決めていきます。資本市場はまさにアニマルスピリッツの塊の場所なので、こういう事態(買収提案)に遭うことは決して悪いことだと思っていません。それを乗り越えていけばいい。これからも、特に若い人たちは頑張っていただきたい。 最後に、このケースコンペティションで一番勉強になるのは実行委員です。圧倒的に実行委員が一番勉強になる役割ですので、また来年も多くの方が実行委員に立候補してもらえることを期待しております。皆さん本当にお疲れ様でした。

株式会社 経営共創基盤(IGPI) IGPIグループ共同経営者マネージングディレクター
木村 尚敬 様
確かに緊張しますね、これ。壇上の皆さんの気持ちがわかります。皆さん大変お疲れ様でした。そして私は、これ1月からキックオフしてるんですよね、事務局の皆さん。ということで約11ヶ月ぐらいの長い、今年のイベントが終わるというところでございます。 最近、私も普段多くの上場企業の経営者の方とお話をしていますが、重要な経営課題が3つありまして、1つは地政学的なリスク。今や中国だけの問題ではなくトランプ関税もありますので、対米対中含めたグローバルな地政学リスクをどう捉えるか。2つ目がAI、生成AIをどうやって経営のアセットにするかというところです。そして3つ目がこの資本市場との対峙なんですね。 ということで昨年はアクティビスト、今年は同意なき買収ということでテーマに取り上げました。これさっき平野さんがRGRのケースを昔やられたとおっしゃられて、私も以前やったことがありますが、実はこの辺の最新のトピックは最近出てきた話題であまりこなれた日本向けのケースがなかったので、普段ビジネススクールでもそんなにやられたことはないのかなという風に思っています。 今年は126チーム592名ということなのですが、正直言うとちょっと参加チームが減っているんです。私も自分でビジネススクールで教えていますので、いろんな人の声を聞くと「ちょっと今年難しすぎからやめときます」という声が結構あって、そういうことなのかなという風に思っています。 リアルに考えると、こういう場面になった時に企業側がどういう対応をしなければいけないかというと、大きく4つあります。1つは買収を仕掛けてきた人とのコミュニケーション。今回で言うと太陽総合商事とどうコミュニケーションするか。2つ目がバリエーション(企業価値評価)、今の企業価値含めてですよね。3点目が修正事業計画の作成。そして4点目がIRということで、それをどうやって社外、社内にコミュニケーションしていくか。これ実は同時並行的に4つ走らせなければいけなくて、結構な作業です。しかも短期間でこれをやらなければいけないので、自分たちだけではできずプロフェッショナルファームも使いながらやっていくのですが、最近あった有名なケースで言うと、プロフェッショナルファームに20数億円のお金を使ったというようなこともあります。もし皆さん有事の際には、古田さんのデロイトトーマツか私の方に連絡していただければサポートしますので言ってください。 今回のケースで実際、毎年トラップを仕込んでいるのですが、トラップを3つ仕込んでまして、1つはオーナー企業の創業家が「けしからん!」という、感情に走る方ですよね。割と「情」っぽい方に引っ張られるというところをあえて埋め込みました。2点目が、太陽総合の提案が短期的な打ち手が多い。拠点売るとかそういうことで、あんまり壮大な戦略っぽいところはあえて入れていなかったということです。3点目が金額で、プレミアム40%という、もっと例えば60%くらいのプレミアムをつけてきたら問答無用でOKなのですが、安かったらハナから話になりませんという、ちょっと微妙なところに落としたというのが1つのポイントになっています。 4つの点で言うと、皆さん事業計画のところ、要は戦略論をしっかり語る、これからどうやって伸ばしていくかというところは、もうほぼどのチームも完璧でございまして、これは本当にビジネススクールで学ばれている、いわゆるハードスキルが出たのかなという風に思います。 セミファイナルに来られた20チームに残念ながら来られなかったチームは、やっぱファイナンスのところ、もしくは4つの選択肢の中の比較検討が甘かったという格差が大きかったと思います。 セミファイナル、グランドファイナルの講評としては、4つほどポイントがあります。1つは「買い手側のロジック」、これの検証をもっとしてもらうと良かったと思います。太陽総合商事もそうですが、日本エクスプレスさんの18%というのは、こちらからすればウェルカムですが、相手側からしてみるとどう映るんだっけとか。MBOするファンドにお願いするとファンドがどう考えるか。その辺り、相手側のロジックをしっかり見ること。 2点目は、企業価値と価格は似たようで違うんですよね。マーケットがついている価格と実際皆さんが思っている企業価値が必ずしも一致しないわけで、さっき古田さんからもありましたが、資本市場は「価格」で動いていますので、そこをどう抑えるか。 3点目は、今までできなかったのになんで明日からできるの、という話です。だったら今までやっていてくださいという話ですね。皆さんが突然覚醒するということになったのでびっくりしました。 4点目がダイナミズムですね。今回4つの選択肢なのですが、場合によっては「もっと高い価格を入れてきたらどうしよう」とか、突然ホワイトナイトが来ちゃったらどうしようということで、局面局面によって展開が変わっていくはずなので、そうなった場合のプランB、プランCを考えるとか、どこがディールブレイクになるかとか、その辺りのダイナミズムが織り込まれているともっと良かったと思います。 最後に、どのチームも触れていなかったかなり重要なキャスティングボードを握っているのが「社外取締役」です。執行の皆さんがMBOがいいと言っても、その瞬間に特別委員会が組成されて、社外取締役がちゃんと機能している前提であるならば、社外の人たちがある程度判断をするわけですよね。その時に一方的に太陽総合商事の4割プレミアムのTOBに反対ということはおそらくならないはずで、どういうコミュニケーションをするか、社外の人に対して執行として何を伝えどういう判断をしてもらうか。この辺りのリアルなところもぜひ念頭においていただければと思います。 12月にこの後打ち上げをして、1月からまた来年度のキックオフをしますので、来年の実行委員になりたい皆さん、ぜひ手を挙げていただいて、私と一緒に10ヶ月間過ごしていただければと思います。大変お疲れ様でした。

セイノーホールディングス株式会社 代表取締役社長
田口 義隆 様
皆さんご苦労様でした。本当にこの会をこれだけ立派なものにしていただいたスタッフの方々、本当心から感謝いたします。業界自体これだけテーマになるよってことを皆さんから紐解きいただいたことで、本当に勉強になりました。 私の方は、このケースを終わった後どう考えるかということで皆さんとシェアをしていきたいと思います。 3つの点があります。1つは「ピンチはチャンス」ということであります。 今人手が足りません。ですから2つ大きな地殻変動が起きてます。 1つは一緒に運ぼうよっていうことが始まってます。これによって変な過当競争、プライスが落ちるっていうことが是正され始めました。 そしてもう1つは、オンビハーフでお客様も自分たちの仕事の中であまり間接的なことやりたくないよねということがあります。 ですから「我々がそこは提供します。ウェアハウスマネジメントも提供します。我々はやります」ということができるようになります。 そうすると付加価値の提供ができやすいということがあります。 それから2つ目には、コア。皆さんがこの会社は何のためにあるのと。これはすごい重要です。 経営理念はお題目ではダメです。 現場がその理念に則って、その自分としての行動の判断ができるというところにしていかないと、その会社の意味、そしてその会社の価値というのは組織全体には伝わっていかないです。 それから最後は、フレミングです。半分水の入ったコップを見て半分しかないっていうのもそうでしょ、半分もあるっていうのも確かです。 ですから物事の事実の意味付けは、皆さんのような知性のある方はプラスに、ポジティブに変えていっていただけるということがすごく重要かなと思ってます。 事実に意味はないです。事実の意味付けは皆さんができるという風に思っています。 是非皆さんの知性を発揮していただいて、物事をポジティブな方向へ、ピンチをチャンスに、そして我々が日本人として第一義にすることをしっかり守っていきたいと思います。 本当に素晴らしい機会いただきまして、勉強になりました。ありがとうございました。

KKRアジア 副代表・株式会社KKRジャパン 代表取締役社長
平野 博文 様
今日はありがとうございます。KKRの平野です。本当素晴らしいこの会に参加させていただきましてありがとうございます。グランドファイナリストの5チームの方、それからセミファイナルも拝見したのですが、本当皆さんすごいクオリティが高くて、優勝・準優勝の方も当然のことながら、他の皆様も素晴らしい出来だなと思います。 僕もちょうど40年くらい前にビジネススクールに行ってまして、その時のこのケースというのがRJRナビスコをいくらでTOBできるかということでした。当時はそんなTOBなんて日本ではないだろう、日本に帰ったら全然役立たないなと思っていたら、今自分がその会社で働いているので、何があるか世の中わからないなと思うのですが、それに比べて今日の皆様のケースというのは極めてクオリティの高いものを皆様が作られたなと思って、まずそのことに非常に感銘を受けております。 私たちKKRというのはちょうど10年くらい前から、このロジスティックの分野をずっと注目しておりまして、何社か投資させてもらってきているわけですけれども、皆様が作られてきたこのオペレーショナルな選択肢や戦略というのは、もう本当によく考えておられるなという風に思いました。 一方でそのファイナンシャルな部分、やはりバリューアップというのはオペレーショナルなリエンジニアリングとファイナンシャルなリエンジニアリングの2つの組み合わせだと思っているのですが、そういう意味でファイナンシャルなリエンジニアリングの部分というのはもう少し研究の余地もあるのかなと思いますし、やはり会社法やそういった法務関係の中で取締役がどういうフィデューシャリー・デューティ(受託者責任)があるのかとか、そういうところはさらに掘り下げていただければなと思いましたが、総論としてはすごいなと思います。 最後に1つだけ、皆様の中で考えていただければと思うのは、我々PEファームというのは確かに数値をずっと見て、いかに多くのリターンを上げるかというところなのですが、やはりその源泉というのは働いておられる人たちにあると思っています。それはやはり我々がいつも投資させていただく時に申し上げているのは、我々は経営陣・役職員の方々の自己実現をお手伝いすることだという風に思っています。 そのために我々は、従業員の方々……役員は当然として、従業員の方々に株を持っていただくということをしています。例えば我々が投資させていただいた日立物流、今ロジスティードと呼んでいますが、2000億投資した中で200億分は従業員の方に持っていただいて。うちの創立者のヘンリー・クラビスがよく言うのですが、「レンタカーを洗う人間はいないんだ」と。「だから車のオーナーになってもらわなきゃいけない。そうなることで会社の価値を少しでも上げていこう」ということになるので、そういった人事制度面やインセンティブプランの話が今日はあまりなかったかと思うのですが、現実の世界ではこれも非常に重要なポイントかと思うので、今後またそういうところも色々と考えを深めていただければと思います。 いずれにせよ素晴らしい会、ありがとうございます。またスタッフの皆様、本当今日はありがとうございました。またもし縁があればと思いますし、これで意外とPEファームに対しての好感度が高いということで安心しました。もしPE関係にご関心があればいつでもご連絡ください。どうもありがとうございました。

住友商事株式会社 取締役副会長
南部 智一 様
南部でございます。グランドファイナリストおめでとうございます。それから優勝、準優勝、特別賞の皆様、素晴らしいと思います。 私の気持ちが太陽総合商事になってしまって、リアリティがあって私いたんですけども。まず、よくこの短時間でこれだけ詰められて、回答のある話ではないと思うんですよね。物事って流動的なので。そんな中で選択肢をよく絞られたという風に思います。ただ憑依してしまったので、質疑の中にはもう会社のポートフォリオ会議と同じような議論をしました。あれはリアリティです。 ということは、常に準備をしていかないといけないんだなという風に思いました。先ほどお話ありましたけども、同意なきTOB……うちはああいうのはやらないですけども、世の中に出てくるので、その時にゆっくりやっていても間に合わない。3ヶ月しかない、意思決定が間に合わないとなると、経営者はあらゆる事態を想定しておいて準備しておくということが重要だと思うんです。それを今日いろんな議論の中で皆さんも気づかれたというか、思われたのではないかなという風に思います。動き出したら止まらないですから、これはぜひ今日の機会を契機に、そんな風に経営をやっていただいたらいいという風に思います。 私は常日頃、経営者というのは事業を持続させて成長させるということで、そのためにはイノベーションというかドライビングチェンジをしないといけないと思ってまして。何かが起こったのにリアクト(反応)をするという人が日本人に多いのですが、世の中アニマルスピリットの人が世界中にいますので、私は海外経験が長いのですが、M&Aほとんど海外なのですが、あっという間に動きますので、ぜひそういう意識で経営をしていただければと思います。 今日でも全く飽きることのないというか、全てにおいて刺激になりまして、自分の経営会議のような会をさせていただきました。そういう意味で私も勉強になりまして、こんな素晴らしい会を催していただいてありがとうございます。六十何人の方がこういうものを作られたということですけども、素晴らしかったと思います。 ただ1つだけ。あんなに事前に資料が用意されていないです。あれはガイダンスのようにどこを見たらいいんだと書いてますし、4つに絞っていまして、これは非常に優しいのですが、日頃はあれが全部外されて、ピースで出てきたものから組み立てていくというのが経営になってきますので、今日はその準備だと思っていただけたらと思います。 最後に、ご家族が見ていらっしゃったらあそこまで突っ込むことはなかったとして思います。日頃の通りにやれと冨山さんからも言われたものですから、つい調子に乗りまして失礼いたしました。皆さんおめでとうございます。

デロイト トーマツ エクイティアドバイザリー合同会社 代表執行役社長
古田 温子 様
皆さん長時間お疲れ様でございました。私はまさにこういうことを日頃から現場でやっているのですが、そういうご経験がない中で皆様素晴らしい分析をされているなという風にまず思いました。 先ほどケーススタディーのご説明があったと思うのですが、やはりステークホルダーを考えて、その利益やコミュニケーションが大事だというお話があったので、ちょっとそちらに引っ張られていたのかなという気もしました。実際のところは、本当に勝負は資本市場の論理で決まっていくというところ、その辺りのお話をお伝えしたいなと思っています。 資本市場の論理で2つ重要なところがあって、「株価」と「株主構成」です。株価が一番重要なのですが、自分たちの経営では成し遂げられないような株価でTOBがかかってしまうとなると、自立的には難しくてホワイトナイトとかそういった話になってくるのですが、ステークホルダーのことを考えるというのはすごく重要ですし、その熱い思いもすごい重要なのですが、それが将来キャッシュフローにどう反映していくのか、それの割引現在価値が株価というところになるので、そこの繋がりをきちんと考えないと防衛できないというところが1つあります。 もう1つ、資本の論理で重要なのが株主構成です。どういう株主構成になっているのかによって、取るべき戦略も変わってきます。勝てるか勝てないかというところになってくるので、例えば、この株価でTOBがかかったらどのぐらいの応募率があるのだろうかというのを、きちんと取得コスト等も踏まえて分析するというところが重要です。TOBで勝てないんだったら、その戦う場を株主総会に移したらどうなのかといったこともありまして、今、対抗措置の発動といった事例が結構あると思うのですが、それはTOBでは応募がかなり来てしまうけれども、総会では過半数の賛成が取れそうだといった読みというのも現実の世界では必要になってきます。 今後、同意なき買収はほとんど毎日のように新聞等に出ていると思うのですが、実際の公開買付届出書や、会社が出している反対の意見表明のプレスリリース等を読み込んで、その裏にどんなことが背景としてあるのだろうかと想像したり妄想したりすると、結構いろんなことが見えてくるのではないかなと思います。 最後になるのですが、今回4つのオプションが提示されていたと思うのですが、実際はいろんなオプションがあります。例えば子会社の太陽ロジスティックスを逆に株式交換で100%子会社化させてください、その分マイノリティの株を持ってくださいとか、いろんな防衛の仕方、交渉の仕方があるので、そういった様々な選択肢を考えるにあたっても、実際の事例をよく見ていただくと今後役に立つのではないかと思います。私から以上になります。

株式会社コーポレイトディレクション 代表取締役 CDI Asia Business Unit Director
小川 達大 様
ありがとうございます。皆さんお疲れ様でした。小川と申します。少しだけお話をさせていただきます。壇上のこの緊張感、すごいですね。 私はグランドファイナルの審査員を4回目か5回目くらいやらせていただいているのですが、今回のケースは多分過去一番難しいのではないかと思いました。そういうことで言うと、ケースの制作をされた皆様、実行委員の皆様、本当にお疲れ様でした。 ケースがとても巧みに作られているので、多分どのオプションを取っても、何らか厳しいツッコミが来るという、そういう種類のものだったかなと思っています。そういえば今回、開会式の時に鈴木さんが「審査員の方からの熱いシャワーを」という話をされて、実際に審査員の方がコメントし始めると、ちょっと熱すぎやしないかなとヒヤヒヤしたくらいなのですが、とても建設的な議論を聞きながらお話ができたのかなと思ってます。 今回のテーマで言うと、物流業界の中のお話で、日本全体、業界全体としてそんなにPBRが高くない業界なんですね。これは日本全体見た時に需要に対して資産が多いということを言っているわけなので、要するにこれからの時代、日本においては業界再編が待ったなしです、という環境なんだろうなと思います。そういう中で、上場してはいるものの、中堅の物流会社さんがこうしたお話のターゲットになるというのは十分考えられることなわけです。 そうしたことで考えると、今回のこの同意なき買収というのは、何か出来事が起こるスタートの話ではなく、これまでの経営の1つの結果なんだろうなと思った方がいいのではないかと思います。ですので、議論の中では、これまでの自分たちの事業がどういう状態になっていて、競争力はどうなのか、なのでどういう風にしていこうかというところを、しっかりシビアに見ていく。それが資本であったりオーナーシップの話にちゃんと繋げていくという、そこが大事なのではないかなと思っていました。 今回「理」と「情」というのが1つのテーマになっていると思いますが、個人的には、「理」と「情」で言うと間違いなく「理」が優先すると思っています。少なくともその「情」を出発点にして「理」を詰め始めると、とてもバイアスがかかります。今回で言うと「けしからん」という気持ち、その「情」が出発点になって「理」を考え始めると、大体間違えると思います。こういう時だからこそ冷静に客観的にいろんなオプションを分析をして、最後に「情」を添える。そういう順番が大事なのではないかなと、個人的には思いながら聞いておりました。 もう1点、事業改善・事業改革のリアリティを持つためには、やはり「やめること」とか「止めること」とか、そういう「失うもの」というのをちゃんと考えるというのが重要かなと思います。大体こういう事業改革のお話は、「これをやります」「新しいことやります」という足し算のアイデアはいくらでも出るのですが、経営資源も限られている中、あるいはこれまでの歴史をある種断ち切るためにも、「やめること」はめちゃくちゃ大事で、そこも1つのリアリティとして重要なのではないかと思いました。 5チームともなかなか甲乙つけがたいと思って聞いておりましたが、最後は鈴木チームですね。菜の花運輸に対する太陽総合商事のTOBを受け入れるということで、最後の話としては、この菜の花が咲き誇るためには燦々とした太陽が必要だったということで、収まりもいいのではないかなと思って聞いておりました。ありがとうございました。
グランドファイナリスト資料
-Document Download-
